イノセント*ハレーション

あたしは...出会ってしまったんだ。

どうしようもなく、憧れてしまう存在に。

失ってきたものを全て持っている人達に。

ただ見ているだけで、空っぽになった心が満ち足りていく気がしていたのに、それは偽物だったみたいだ。

本当は何も満たされていなかった。

欲しいと手を伸ばせば簡単に手に入るものじゃないと分かっていたから手を伸ばさなかっただけで、本当はすごく、喉から手が出るほど、欲しいものだった。


大切な関係性...。


あたしが長い時間をかけて無我夢中で一生懸命に作り上げてきたのに、一時の間違いで崩れてしまうほどに脆く儚かったもの。

要らないと思っていたのに、

やっぱり欲しいんだ。

あたしも人並みに

感情も繋がりも

欲しいんだ。

あたしって...


「ほんと...バカだ」

「凪夏ちゃん、今なんか言った?」


鶴乃さんが心配そうに顔を覗き込んで来たので、あたしは首を大きく左右に振った。


「大丈夫。ほんと良かったね、優勝」


あたしは口角を上げた。

昔から自分の笑顔が嫌いだった。

それでも好きだって言ってくれた人がいた。


"凪ちゃんの笑顔は武器だよ。わたしは凪ちゃんの笑顔を見ると頑張れるんだ"


そう言ってくれた人を、あたしは自らの意思で、身勝手に手放してしまった。


絆奈、ごめんなさい。

でも、あたし...やっぱり欲しいんだ。

昔、絆奈と築いたような関係性が、

繋がりが欲しいんだ。

絆奈を傷付けたのに、また欲しいだなんてわがままだって分かってる。

だけど、ごめん。

あたしは...あたしだから。

絆奈から離れてから蛇行して生きてきたけど、やっぱり真っ直ぐ生きたい。

真っ直ぐ走っていきたい。


だからこそ、この胸にあるもやもやを払う必要がある。

憧れに近づけば近づく程に加速していく想い。

この気持ちの正体を

定義するよりも先に

消さなければ。