イノセント*ハレーション

日葵があたし達の前を通過し、勢いそのまま弓木くんに赤いバトンを渡した。

普段は静の動作が主の弓道部だから走ることがないというのに、体育の授業に記録を取ったら戸塚くんより速いからアンカーに選ばれたらしい。

がむしゃらとか、一生懸命とか、

そんな熱いキャラじゃないことは誰もが皆知ってる。

なのに、こんなにも一心不乱に走れるのは、きっと先に走りバトンを繋いでくれた日葵がゴールで待っているからだ。


「あ!あの人、同じ弓道部の矢吹くんだ!」


彼の後ろから5組のアンカーが追い上げてくる。


「負けるな澪夜!」

「頑張れ、澪夜くんっ!」


鶴乃さんと湧水くんの最後の人押しで、弓木くんは矢吹くんという人を振り切った。

ゴールテープが見えてくる。

不覚にも心臓がバクバクしてくる。

あたしは怖くなって目を瞑りそうになるのを必死に耐えてその瞬間を見届けた。

弓木くんが左脚で思い切り地面を蹴り、右腕がテープに触れた。


「ゴールっ!学年別リレー2年生の優勝は1組ですっ!」


担任の大橋先生が歓喜のアナウンスをした。

開場中が拍手に包まれる。

あたしも拍手をしながらその渦中にいる2人を見つめていた。

長い時間を共に過ごしたからこそ、安心してバトンタッチが出来たのはもちろん、やはり赤い糸が強く2人を結んでいるから、優勝という奇跡のエンドを迎えることが出来たんだと思う。

日葵が笑えば、弓木くんも笑顔になって、

弓木くんが手のひらを出せば、日葵が全力でそれに応えて、

パチンっとこれ以上ないくらいに爽快な音が弾けて、

もうこれ以上ないくらいに...

2人がお似合いだって気づくんだ。