イノセント*ハレーション

消えて。


第一走者の桜川さんが見事なスタートダッシュを決め、戸塚くんにバトンタッチし、戸塚くんがぐんぐんと加速し、1位に躍り出て日葵にバトンを渡した。

日葵はその小さな身体を一生懸命に動かして前へ前へと駆けていく。

その姿が昔のあたしを想起させる。

今グランドを走っているのは自分なのかという錯覚に陥る。


幼い頃、学生時代短距離走の選手だった父からアドバイスを受けて駆けっこの練習をした。

身に付けたフォームで走ったら、車も電車も新幹線も追い抜けそうだと思い込めるくらいひゅんひゅんと加速した。

小学校の運動会であたしはリレーのアンカーに毎年選ばれていた。

それを喜んで観てくれる家族がいて、友達がいて、あたしは...嬉しかった。

走ることが楽しい。

自分の姿を見て誰かに笑顔を与えられるのが嬉しい。

純粋に思えていたあの頃に戻れたら、

あたしは今も全速力で走っていただろうか。