イノセント*ハレーション

本当に気分が悪くなり、あたしは昼食を食べずに保健室に駆け込んだ。

鶴乃さんには、軽く熱中症ぽいけどリレーの時には合流するから気にしないでと言った。

保健室の先生からは冷えピタを渡され、首と額を冷やして熱を取り、定期的に水分を取るようにと言われた。

気分が良くなるまで眠っていていいと言われたけれど、あたしは目をばっちり開けて薄いカーテンの向こうの景色を想像していた。

昔から色白で暑さに弱いとはいえ、保健室に駆け込むような非常事態に陥ることはなかった。

こんなになるまで、

ボロボロになるまで、

身も心も削ったことは......


なかった。


脳内で1度そう判決が下されて、数十秒後に思い出した。


あった、よ。



心身を全部費やして向き合ったことがあって、

向き合った人がいた。

...いたんだ。

80年という長い人生のたった3年という、短い時間しか経過していないというのに、経験を継続していなければ、人は忘れてしまうものなのかもしれない。

あたしは忘れてしまっていた。

その時は1番大切なことだったのに、忘れてしまっていた。


大声をあげた。

両腕を広げて抱き止めた。

両腕でぎゅっと抱き締めた。

右手でそっと頭を撫でた。

何度も何度も嗚咽した。

声が枯れるまで泣いた。

胸が張り裂けそうになるまで悩んだ。

それなのに、忘れていたなんて。


「あたし...落ちぶれたな」


堕落していた。

人と向き合うこと、人と関わることを拒んで生きてきて、感じることを恐れ、鈍感になってしまった。

堕落したところに一気に流れ込んできたものだから、対処しきれなくなって、こんなにも今ボロボロになってしまったんだ。

全て自業自得。

反省、しよう。


...ううん。


反省、なんかじゃない。

新しい自分、

新しい価値観を求めるために、

全部全部洗い流したい。

混沌とした感情も、

今にも崩れそうな身体も、

全部リセットしたい。


なんか、そう、

漠然と思う。