イノセント*ハレーション

「...どゆこと?」


弓木澪夜は分かってる。

昨日のあたしを見ていて思ったことがある。

だから、今あたしに話しかけたんだ。

それなのに、自分から話さず何か聞き出そうとするのは、ちょっとずるい。

自分でも分かってる。

自分を見せないで相手ばかり探ろうとして、とことんヤなやつだ。

そんなヤなやつにも真っ向に立ち向かってくれる弓木澪夜という人間はすごく貴重で、やはりあたしの辞書に載っているありきたりな言葉では語れない人だと改めて感じた。


「昨日の雨谷は雨谷じゃないだろ?日葵から聞いた。雨谷は中学時代バスケ部だったし、授業のドッヂボールでど速球投げたこともあったって」

「つまり、あたしに本気を出せ、と」

「本気も、本音も...な」


あたしは斜め45度振り返り、視界の隅に彼が映るか映らないか微妙な距離感で呟いた。


「かっこつけるな、バカ」


言われたからには、

見られているからには、

やるしかない。

満身創痍のあたしに何が出来るのかなんて聞かなくても分かる。

やれることなど、

100パーセント出すことなど、

不可能。

だけど、やるんだ。

あたしを見ていてくれる人がいるって、

分かってしまったから。

あの日、全て失ったと思ったのに、

奇跡が起こって、またあたしを必要としてくれている人が現れたって知ってしまったから。

あたしは続々とコートの中央に並び始めるメンバーの元へいつもの1.2倍速で駆け寄っていった。