イノセント*ハレーション

言葉を飲み込み、動いてもいないのに流れる汗をハンカチで拭っていると、彼の視線がギャラリー席に向いた。

まぁどうせ、日葵を捜しているんだろうけど。

ここにいるのが日葵じゃなくてあたしでごめんと謝るのは自分に対して失礼だからしないけど、そう思う気持ちがゼロじゃないことは分かっていた。

どうにか無事に試合が終わりますように。

そして、日葵弓木ペアのダブルスを早く拝めますように。

あたしは、右手の手首に通していたゴムで邪魔な前髪を結ってちょんまげにし、女子達が次々に半袖短パンになる中、協調性を発揮して同じ格好になった。

全ては恐ろしい桜川さんの鋭い眼光を反らすため。

ほんと、それだけだ。

準備が整い、コートインしようかと歩き出すと、パンッと良い音を立てて左手首に電流が走った。


「何?試合始まるよ」

「1つだけ言っておきたいことがあって」


彼は視界からあたしが逃げないと悟るとゆっくりと手を離し、口を開いた。


「やるなら全力でやれ。全部ぶつけていいから」