絶えることなくなるシャッター音。



「あのっ、この間のこと、覚えてますか…?」




思い切ってあの日のことを聞く。




「この間って、看病に来てくれたときか?」



その言葉に、静かに頷く。












「…俺、莉子に何かしたか?」








本当に何も覚えてない、と言ったような表情だった。




「…いえ、やっぱり何もないです。変なこと聞いてすみません。」




やっぱり覚えてなかった。そうだよね、しゅんくんにとったら私なんて、なんでもない女の人なのかもしれない。



キスだってきっと慣れているだろう。



私は高校生で、彼は大人。




それに同じ世界にいる人じゃない。





分かってたのに、どうしてこんなに悲しいんだろう。




「気になるだろ、教えてくれ。」



私の様子がおかしいことに気づいたのか、真剣な眼差しで問いかけてくるしゅくん。




もういいんだ。これ以上。




「本当に何も、ないです。」



ショックだった。



あれが私にとってはファーストキスだった。



ただ何がショックだったのか、覚えていてくれていたら、嬉しかったのか、しゅんくんの返事が何だったら正解だったのか、私には分からなかった。



覚えてても、ショックを受けなかったの?



覚えてないからショックだったのか、自分の感情がわからなくなった。



自分のことなのに、何も答えが出なかった。