「今から手配は間に合わないですね。この後のスケジュールもあるし。」



『もっと早く分かってただろ。』と怒っているスタッフさん。



たしかにもうしゅんくんメイク中なのに、こないなんて、大問題よね。






「あの佐伯さん、この子モデルにどうですか?」







この子ってどの子?って思ったときには、私はもうけんけんの手によって差し出されていた。




つまりこの子とは私のこと。



ちょっと何を言っているかわからない。





「その子は?」



ポカンとした顔で、佐伯さんが私のことを見つめる。



「今日見学に来てる白木莉子ちゃんです!」



「え、あの、」



またけんけんの突拍子もない、提案にあたふたする。




嫌な汗をかくのがわかった。





佐伯さんに、ジッと穴が開くほど見つめられる。



「うん…良い!!凄くいい!!君にお願いしよう!!」



「え、でも、」



状況がよくわからなくて、混乱する。



「顔は映らないし、抱き合ってる瞬の表情を撮るだけだから!」




「抱きっ!?」




聞き捨てならない言葉に、目を見開く。



佐伯さんもわりと突拍子もない人じゃない!?