「う、嘘。全然気づかなかった。」




今まで星護がそんな素振りみせたことなかったのに。




「でもお前、好きな人いるだろ?」



その言葉に、何故かドクンと胸が脈をうつのがわかった。




「え?」




「悪い。この前、駅前の路地裏で車に乗ってる男と話してる莉子を見かけた。」




この前って、しゅんくんの家に泊めてもらって、送ってもらったときのことかな。




「え、あれ見てたの!?」




ってことは、しゅんくんのこともバレているのかも。



「…今までに見たことのないくらい嬉しそうで、恋してる顔してた。ああ、その人のこと好きなんだなってすぐわかった。」




「そ、そんなんじゃなくて、」




しゅんくんは、もちろん私の推しだけど、恋とかそんなことではない。




もちろん世界一かっこいいし、一番ドキドキする相手だけど、それとこれとはきっと違う。



「嘘つくなよ。…まあどこの誰だよとか、聞く勇気はまだ出ねえけど。」



苦しそうな星護の表情。




こんな表情させるなんて私最低だ。




『どこの誰だよ』ってことは、きっとしゅんくんのことは見えてなかったんだろう。





「そっか、」



これ以上なにも言えなくなった。





もうどうして良いかわらなくて、俯くしかなかった。



「どうせ今日の急用もそいつだろ?…でも俺、莉子のこと諦めねえから。」




真っ直ぐ見つめる瞳が、いつも以上に真っ直ぐで、揺らがないから、私は頷くことしかできなかった。