1110号室、しゅんくんの家の前に着き、もう一度インターホンを押す。




ーーーガチャッ





「はい。」



開いた扉の向こうから現れたのは、とても辛そうなマスク姿のしゅんくん。




熱もかなりあるのか、息も荒い。





ああ、なんかもう申し訳なさで消えてしまいたい。





とりあえずお邪魔して、リビングまで案内してもらう。




「あ、あのすみません。しんどいのに来てしまって…」




泣きそうになるのを堪える。





「いや、どうせ健一が無理言って頼んだんだろう。」




「…すごく嫌そうだったから。ごめんなさい。」



さっきの声のトーンとか、ため息とか。



「え?ああ、違う。万が一、俺の熱が莉子に移ったらどうするんだって思った。健一はそこまで考えてないんだろうけど。」



そういうことだったのか。




自分がつらいのに、私のことを考えてくれる。





家の中なのに、マスクしているのも私に移さないようにわざわざ付けてくれたのかな。





その事実にどうしようもなく、心が鷲掴みされる感覚に陥った。