ドームの前にはたくさんのオタクがいる。




「ていうか、莉子ちゃんって最近冷め期なの?」




この日のために、新しい服を着て、いつも以上にきらきらしている花奏ちゃん。



「え?」




「…うーん、なんていうかいつもよりテンション低くない?」



「そ、そうかな。」





たしかに、遭遇するようになってから、やけに冷静になっている自分がいることは否めない。




こうやってお金を払って、推しに会いに来る人がたくさんいるのに、それを差し置いて私はシリウスと関わっている。





それが優越感よりも罪悪感を生む。





でもシリウスを好きなことに変わりはない。




ただ誰とも分かち合えない、この不思議な感覚に今までのようになれない。




「莉子ちゃん、チケット発行しにいこう!」



シリウスの事務所では、チケットの発行は当日行われていて、席も開演の一時間ほど前にわかるようになっている。