「莉子!!」










「え、」



一瞬、私を呼ぶあの声がしたような気がして振り向くけど、こっちを見てる人なんて一人もいない。



幻聴だとしても、おさまらない胸の鼓動はまだ彼を忘れられない証拠。



もうしゅんくんに会えるわけないのに、こんなところにいるわけないのに。




でもあの声はしゅんくんの声。



どうしてこんなにも身体に染み付いているんだろう。





彼はきっともう私のことなんて忘れて、キラキラした世界で輝き続けているんだろう。




旧校舎への廊下、格段に人がいなくなる。ここだけは賑わっていない。




「こ、莉子っ」




もう一度背後から聞こえた声、振り向いた刹那。




「え、」




5メートルほど離れた場所に、ピンク色のうさぎの着ぐるみが立っていた。