「へぇ〜この子が〜」




そう言って、さらに近づいてくるけんけん。





「おい、やめろ。困ってるだろ。」






そう言って、けんけんの行動を抑えるしゅんくん。




…いつもの感じだ。





テレビとかライブで見てる感じ。






けんけんが暴走しそうになるのをしゅんくんが止める。




そんな絡みが目の前で見れるなんて。




私は前世でどれだけ徳を積んだのだろうか。





こんな尊いやりとり、泣けてきてしまう。





「君もわざわざありがとう。」





パーカーを受け取ろうと差し出されるしゅんくんの手。





え、ええ。ここに私が触れてパーカーを置くの?






無理無理無理。






ドキドキーー




深呼吸をして、距離を目一杯取って、パーカーを渡す。






「あ、ありがとうございました、」




もちろん目を合わせることなんてできない。





大袈裟に震える手は目で見て分かるほど。恥ずかしいけどバレてるだろうな。






「瞬、この子の名前聞いてないの?」





「ああ、そういえば聞いてない。」





「名前なんて言うの?」






「しししししし、白木…り、莉子です。」






震えた声で話すのがやっと。