健一side
「遠藤さん、どうしたんすか?」
事務所の喫煙室。
小窓から、うなだれて何やから悩ましい表情をしている遠藤さんを見かけて声をかける。
こんなところでタバコも吸わずに何やってんだろ。
「いや、最近、瞬の調子が悪くて。」
スタッフの人にも注意を受けたらしい。
マネージャーの中でもトップであるチーフの遠藤さんは、それがショックなんだろう。
「あー、そっすね。…理由分かってますよね?」
確実にあの日から、様子がおかしい。
「ああ、」
目線を落とした、遠藤さん。
きっと全部わかってるんだと思う。
でも捉え方が違うと思う。
「俺たちが一般人じゃないことは十分理解してます。夢を売る仕事だってことも。だけど、恋まで制限されなきゃダメですか?」
言い方は悪いかもしれないけどバレなければいいと思う。
バレれば全てが終わるけど。



