「あんな、それはご」
何か言おうとしてくれたけど私はさえぎって言った。

「ごめんなさい、私帰りますね。」
私はそう言い残すと龍基くんの言葉も聞かずに立ち上がり、一生懸命走った。

放課後の学校はシーンとしていて私の心の中みたい。
とにかく龍基くんから離れたかった。
もう少しいたらもっと気持ちをぶつけてしまいそうだったから。
(しばらくは会えない。)
自分の気持ちを整理できるようになるまでは。

走って走って勢いよく家のドアを開ける。
誰もいない真っ暗なリビング。
普段通りの様子がこんなにも悲しくて寂しいと思ったのは龍基くんに突然告白された日以来だ。

ハッとする。
(龍基くんと一緒にいるうちに寂しさを忘れられてたんだ。)
毎日が幸せで家に帰った時に誰もいなくても龍基くんが隣にいてくれるだけで悲しさなんてすっかり忘れられた。

(龍基くんは何か言おうとしてくれてた。それも聞かずに自分の気持ちをぶつけて…何やってんだろう、私。)