今考えると自分勝手だと思うけど俺にはそれ以外思いつかなかったんだ。
誰かを好きになるなんて考えたこともなかったけど結菜のことを知っていくうちに本当に好きになっていく自分がいた。

名前は佐藤結菜。
同級生で隣のクラスで…お人好しで困っている人を見ると放っておけない。
付き合いたいという願いは強引に叶えた。
結菜には悪いとは思ったけどそれしか方法がなかった。

で、現在に至る。
(何してんだ、俺…。)
手紙を渡した直後、俺は部屋から出て兄貴たちに見つからないよう、2階の使っていない部屋に入った。

自分のダサさに頭を抱える。
しっかり口で伝えたらいいのに手紙に隠すなんて...。
本当に意気地なしだと自分でも思う。

はぁっとため息をついて考えた。
(気づいてくれるだろうか。もし、気づいたとしても結菜は俺を好きだなんて思ってねぇから別れることになるだろうな。)
気づいてくれないのも別れるのもどっちにしても嫌だなんて俺はわがままだ。
「あぁっっ! 」
自分でもどうしたいのか分からなくて頭を抱えて叫んだ。

「龍基くん!!」
小さいけどはっきりと聞こえた結菜の声に俺がはっと顔を上げるのと結菜が俺がいる部屋のドアを開けるのは、ほぼ同時だった。