捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~

「せっかくマニーレの無能を引き取って差し上げるんですから、感謝もしていただきたい」

「無能……」

「おや、違うのですか? マニーレ伯爵は炎を操り、妹のクリス様は物を変化させることが得意だと言って石を花に変えて下さいましたよ。さすがマニーレ家の方々です。ですが、貴女はなにひとつ特別な力のない無能だそうですね」

 成人したクリスの付き添いとして王都へ向かうと社交界ではすっかりサアラが無能だという噂が広まっていた。国王陛下に気に入られている父、そして義母とクリスが触れ回っているのだ。おかげでサアラは聖女の血を引きながら魔法が使えないマニーレ家の無能扱いだ。聖女の再来を待ち望む人々にとって嘲笑され、クリスは満足そうにしていた。彼らのようにルベリオもサアラが無能であることを嘲笑いたいらしい。

「安心して下さい。貴女の血にはそれ以上の価値がある。伯爵も厄介払いができたとこの婚約を祝福してくださいましたよ。おっと」

 悪びれもせずにルベリオは真実を告げる。目の前にいるのにまるでこちらを見ていない、貼り付けたような笑みがサアラは苦手だった。
 ルベリオは退屈を紛らわせようと勝手に自分が楽しい話を始める。

「ひとつ面白い話でもしましょうか」

 サアラの意思など必要ない。会話は既に決定事項だった。

「シエン・ノースハイムをご存じですか?」

「ノースハイムの領主様ですよね? もちろんです。若くして領主になられたという噂はマニーレにも届いていますから」

 他にも耳にした噂はいくつもある。クリスの付き添いとして王都に向かえばシエン・ノースハイムはいつだって話題の中心にいた。