捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~

「おなか、すいた……」

 昼の一件から食事を抜かれたサアラは空腹に耐えかね夜の庭を彷徨う。もちろん最初は厨房に向かったが、義母に忠実なメイドが待ち構えていたのだ。以前サアラを哀れに思った料理長が食事を与えたことが気に入らなかったのだろう。
 初めは布団を被って眠ろうとしたが難しく、せめて庭にある木の実でも食べられないかと徘徊していたのである。そんなサアラの目に留まったのは裏庭の赤い実をつける木だ。

「あれはハルの実。甘くておいしいの。薬の材料にも使われて……どうして実のなまえや魔法薬のことがわかるの?」

 疑問に思いながらもサアラは飢えを凌ぐことを優先した。これを植えてくれた庭師に感謝し、近くの石に上って限界まで腕を伸ばす。なんとか手を伸ばせば届きそうなので背の低い木で助かった。

「きゃっ!」

 安堵したものの、油断したことで足を滑らせてしまう。なんとか実を掴むことができたのは幸運だ。こんな時、早く大きくなりたいと思ってしまう。おかげで少しだが手の甲をすりむいてしまった。

「いたい……」

 大きな瞳にじわじわと涙が浮かぶ。

「そうだ! ハルの実はいたみ止めの薬にも使われるから、こうやって……少しでもいたいのが消えますように」

 サアラは痛みが軽減するよう擦りむいた場所に実の汁を垂らした。

「薬はとてもやくにたつのね。ハルの実のことも知っていたし、もしかして薬も作れちゃったり?」

 それを望めばサアラの頭にはしっかりとその手順が浮かんでくる。しかもサアラの頭に浮かんだレシピはただの薬ではなく魔法薬だ。魔法薬とはその名の通り薬に魔法をかけることで特別な効果を促す。それは通常の薬よりも効果があり、奇跡を起こす薬とされている。
 イメージしたところ、どうやら簡単なものは材料さえ揃えば機材がなくても厨房でも作ることができるようだ。しかしここでもどうしてそのような知識があるのかわからない。けれど今は頭に浮かんだ知識を使ってみたくてたまらなかった。

(わくわくする。なにかをしてみたいと思うなんてひさしぶりだもの)