捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~

「その魔法、母さんは知っていたのか?」

(魔法? サアラは魔法を使ったの?)

 とっさのことでよく覚えていない。けれどあのような現象が自然に起るはずがないと言えばその通りだ。

「お前はずっと魔法が使えない私を母さんと嘲笑っていたのか? マニーレ家の落ちこぼれだと!」

 父は火の魔法を使えるはずだ。それに父を笑ったことなどない。

「お父さま、なにをいって……」

「うるさい! ああ、やはり私には無理だった。愛そうとしたのに、お前は日に日に母さんに似ていく。その目だ。私を見下す目! だから私は母さんがお前を育てることに反対だったんだ。それを!」

 これまでは無視されてきたが、初めて向けられる憎悪に身が竦む。
 なにを言っているのかサアラには理解できなかった。自分と祖母のことを言っていることしかわからない。

「無力な私を笑っていたのか」

「お父さま……?」

「もういい。お前は黙っていろ。二度とその呪われた力を使うな!」

「のろい? これは呪いなのですか?」

 温かくて優しい光りだった。サアラにはとてもそうは思えない。
 だが父はきつく否定する。

「呪いでなければなんだというんだ! お前の魔法は忌むべき力。いいか。もう一度力を使ってみろ。今度は家を追い出すぞ。いいな!?」

 サアラが声も出せずにいるとクリスが目を覚ます。

「おとうさま……お父さまがクリスを助けてくれたの?」

「ああそうだとも。怪我はないか」

 クリスは幸せそうに笑い、父はクリスを抱き上げ去っていく。残されたサアラは父の背中を見つめ、今にも泣き出しそうな苦しみに耐えていた。
 その後、クリスが窓から転落したのはサアラのせいということになり、怒った義母に頬を叩かれた。おまけに罰として夕食を抜かれてしまったのでさすがのサアラも涙を滲にじませたが、泣いては立ち上がれなくなってしまう。
 気付かない振りをしていたけれど、本当はずっと前から知っていた。自分が父に愛されていないことを。家族の間に亀裂が奔っていたことを。それが今回のことで修復不可能なまでに壊れてしまったのだ。