都茶(つさ)のおじさんが?」

「はい…。
宝くじで100万円当てたそうです…」



都茶とは都茶世安(せあ)で私の大親友です。



「その100万円で家族旅行に行くと…。
うらやましいです………」

「旅行に……行きたいのか?」



私の左手を握って歩くこの方は恋人の大歩留武(たぼるむ)さんです…。



「いいえ…違います…。
私がうらやましいのは家族が喜ぶ事が出来る事で…」



旅行には全く興味ないです…。



「じゃあもし100万円あったら…。
凪架(なぎか)は何をしたいんだ?」

「家族の欲しい物を買ってあげたいです…。
ママには美顔器…。パパには釣り道具…。ハンクには美味しいおやつを…」



ハンクは私の愛猫です…。



「自分には…何も買わないのか?」

「はい…。
欲しい物がないので……」

「そっか……」

「留武さんは…何か欲しい物がありますか?」

「そうだな……。
時間が欲しい。
凪架と二人きりの時間がもっと欲しい……」