ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「とりあえず結婚は来年以降にしてね。後でまたゆっくり」

「ああ、わかった。気をつけて」



 後片付けを済ませて夜の九時。よかった。この時間なら泊まらずに済む。
 任務は完了だ。

 楽しかった。

 いっときの夢ではあっても、恋人がいる自分になれた。誰かに愛される私に。

 もう少しこのままと思ってしまいそうになる気持ちに蓋をする。
 これ以上は危険領域。現実とかりそめの境が見えなくなる前に退散しなければ。

 早く、早くと自分を急かした。

「それじゃ、私も帰りますね」

 ぺこりと頭を下げると――。

「ダメだ」

 朝井様は目を薄めて睨む。

「えっ? ダメ?」

「責任とってもらわないと」

「なんの責任ですか?」

「俺を愛しているんだろう? この状態で君とは別れたと言えると思うか?」

 えっ!

「そ、それは……、えっと」

「完全に信じたな、父も母も」

 それはまあ、きっと信じてくれた思います。

 確かにがんばりすぎたような気もするし。

「で、でも、ああするしか。そもそも、慎一郎さんが言ったんじゃないですか。愛しているって」

 そうですよ。私だけの責任じゃないですもん。

「よし、わかった。契約しよう」

 今度はなに?