ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 ピクリともしないので、腕に手をかけたそのとき、パチッと開けた目と目がかち合った。

 ジッと見られて心臓が跳ねる。彼の腕に触れていた手が宙に浮く。

「桜子……」

 名前を呼ばれて、動けなくなる。

 彼は、無言のまま両手を差し出した。おいで、とでも言うように。

「――慎一郎さん?」

「少しでいい」

 断ったほうがいいんだろう。

 でも私は断れなかった。なぜか彼が傷ついているように見えて。

「どうしたんですか」と、腕を伸ばすと、そのまま彼に抱えられた。

 じんわりと温もりと一緒に切なさが込み上げる。

「ホッとするな」

「お疲れなんですね」

 それから数分。もしかすると数秒が経ち、私たちはどちらからともなく体を離した。

「ありがとう。生き返ったよ」

 顔を上げて彼はノートパソコンを見たけれど、開いたままのノートパソコンはスリーブモードになったのだろう。真っ暗になった画面にはなにも映し出していない。

「コーヒー入れましたから、どうぞ」