ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「今からチェックして、買い出しに行ってきますね」

 見たところ、まったくと言っていいほどなにもない。お皿やカトラリーは私が揃えたからあるのはわかっているが、野菜はおろか、調味料もない。

 冷蔵庫の中はビールとミネラルウォーターに炭酸水が入っているだけだ。卵すらひとつもないのである

 彼はなにを食べていたのやら。

 それとお掃除は--。

 ぐるりと見回すと部屋は片付いていた。

「ん?」

「いえ、綺麗なままだなと思いまして」

「実はね、昨日一日だけ実家のハウスキーパーを頼んだんだ。あの後、前の家から一時倉庫を借りて保管しておいた荷物を運び入れたりしたんでね」

「そうでしたか」

 言ってくだされば手伝いに来ましたのにと言いそうになり、グッと言葉を飲み込む。彼はもうコルヌイエのお客様ではないのだから、距離を保たなければいけない。

 さて、次は。

 買い出しのリストを作りながら、ご両親の食の好みを聞く。