ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 朝井総合病院の院長夫人として、彼女なら、なんら恥ずかしくない――。

「では、失礼します」

 頭を下げながら喉の奥が苦しくなった。

 私に足りないすべてを持っている人。慎一郎さんが実家に泊まったあの日、彼女と一緒にいたの?

 レジデンスに戻ってきたとき、そういえば新しい英語の本を見てた。

 あの本は彼女にもらったの?

 ロビーから奥へ進み、人けがなくなるところまで来ると、耐えかねたように涙が込み上げてきた。

 そのときふと、お腹が動いた気がした。

「あっ」

 やっぱり動いてる。まるで抗議するみたいに。

 もしかして、怒ってる?

 大きく息を吐いて、気持ちを落ち着けた。

 ごめんね、めそめそしちゃってバカみたいだね。

 慎一郎さんは、一緒に帰ろうって言っていたのにね。

 彼を信じなきゃ。

 

 夕方の五時前に慎一郎さんからレストランに着いたと連絡があった。

【八代を誘って一緒に来たよ】

 そうか。やっぱり小池薫さんとは二人きりじゃないのね。