あのとき彼は寝ぼけていて、私に両方の腕を差し出した。
「君を抱きしめながら、この温もりが欲しいと思った」
空を見上げながら彼は言う。
「多分、あのとき恋を自覚したんだな、俺は」
え? 恋?
「君は俺の初恋だ」
私を振り向いた彼は、にっこりと微笑む。
「慎一郎さんの、初恋?」
少し照れたように彼はうなずく。
「ああ、そうだ。初めての感情だった」
思わぬ告白に胸が熱くなる。
「君にその気がないのはわかっていた。俺もまだ自分の気持ちに戸惑っていたのもあって、一年の契約はちょうどいいと思った」
私も、自分の気持ちがよくわかっていなかった。
恋への憧れなのか、慎一郎さんへの愛なのか。
「それから、何度も愛してると言ったが、君はまったく信用してくれない」
「だって――まさか、そんな」
微笑みから一転して、彼の目が真剣になる。
「心から、君を愛しているよ。桜子。君だけだ」
慎一郎さん。



