ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「ああ、宿泊ではなくレストランやラウンジをよく利用するらしい」

 それじゃやっぱり、私を助けてくれたあのお客様?

「嫌がらせをされていたスタッフの名前は、夕月さんだと言っていたよ」

 そんな偶然があるなんて。

「すまなかった」

「そんな。慎一郎さんはなにも」

「知らなかった自分が許せないんだ」

「でもそれは私が、言わなかったから……」

「頼む。これからは、少しでもおかしいと思ったら、どんなに些細な出来事でも言ってくれないか?」

 心から心配そうな目をした彼にジッと見つめられて、瞼を伏せた。

 言った方がいいのはわかっている。

 でも、少し我慢すれば済むと思ってしまう。

「俺に心配かけたくないと思うのはよくわかる。でもな、君ならどうだ? 俺がなにも言わなければ、がっかりしないか?」

 ズンと胸が痛んだ。がっかりされたと思うと悲しくて。

「両親が家に来て、君に婚約者のふりをしてもらったあの日、俺がソファーで寝てしまったときを覚えてる?」

「――はい。もちろん」