ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「そうなんですね」

 ため息をついた彼は、困った顔をして私を振り向く。

「うんざりしたか?」

「なににですか?」

「いつまでも子供扱いする両親と使用人の話に」

「全然です。皆さんに愛されているんだなぁって」

 みんな彼が大好きなんだろう。

 慎一郎さんはクールで、突き放すような冷たさを感じさせるけれど、心は温かくて優しい人だ。病院でも彼は、患者さんに彼に全幅の信頼を寄せられている。

 私が入院した短い時間でもそれがわかった。

 忘れ物を届けに行ったときも、彼がロビーで高齢の患者さんに優しく声をかけいるのを見た。背中をかがめて、患者さんに視線を合わせて優しく語りかけていた。

 コルヌイエのスイートルームにいる朝井様とは、まったく別の顔をしていた。

 どちらも本当の彼だと、今の私にはわかる。

 彼は優しさの安売りをしないだけなのだ。

「そういえば昨日、病棟で面白い事件があったよ」