ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 今でも時々思う。父が美形でさえなければ、母はもっと長生きできたのではないだろうか。

 私たち家族は今でも一緒に幸せに暮らしていたに違いないと、そんな思いが脳裏をよぎるのである。

 だから私はイケメンが苦手だ。

 女性たちがキャッキャと騒げば騒ぐほど私には遠い存在になる。

 朝井様は誰がどう見てもイケメンで、しかも資産家というおまけつきの王子様だ。

 私以外の全員が彼に夢中になったとしても、私だけは惹かれない。

 むしろ心は朝井様の目のように冷えている。

「朝井様もなんとなくそれがわかるから桜子を指名するのかもね」

「そんなものかな」

「そうよ」

 腹話術で会話をし、接客をしているうちにコールセンターから連絡がきた。

「夕月さん、外商さんが見えたそうよ」

「はい。わかりました。では行ってきます」

 美江ちゃんにファイトと送り出され、通用口へと向かう。



 連絡をしてから四十五分。予定通りである。