ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 客から誘われたりしないかと聞くと、自分の信念して客とは付き合わないと決めていたという。
 生真面目な彼女らしい返事だった。

『慎一郎さんは特別です』

 恥ずかしそうに桜子は、俺の胸に顔を埋めた。

 彼女はホテリエの仕事が好きだ。
 ここコルヌイエを愛していると言ってもいい。

 コンシェルジュを目指して英語のほかに中国語も勉強していた。自作のノートを作り、質問された記録をとって日々研鑽して、眠い目を擦りながら勉強していたのを見ている。

 俺は彼女の夢を応援したい。

 だが結婚して俺が実家を継ぐとなれば、今の家から毎日通うのは無理だ。ここから実家までは車でも一時間近くかかる。

 逆に実家の近くに家を借りたとすると、今度は彼女がこのホテルに通うのは厳しくなる。

 妥協して中間点に家を探すにしても、遅番の彼女の通勤を考えると心配だ。

 だからといって彼女と別れるつもりはない。

 この一年で時間をかけてふたりで一緒に生きていける方法を見つけていきたいと思っているが。