ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 挨拶も早々に用件を切り出した。

「実は桜子のことで、ちょっと聞きたいんだが」

 彼女は怪訝そうに眉をひそめる。

「桜子に、なにかありましたか?」

「仕事から帰ったら旅行に行くというメモがあってね」

「旅行……」

「今朝はなにも言っていなかったし体調が悪そうだったからちょっと心配でね」

「朝井様、バーでお待ちいただけませんか? 私ちょうど仕事が終わるんです」

 彼女は小声で「私の恋人がそこのバーテンなので」と言った。

 そういえば桜子がそんな話をしていた。親友にはバーテンの恋人がいると。

「わかりました。では先に行って待っています」

 カウンターを離れてエレベーターへ向かう。

 この時間だけあって、ロビーには人が少ない。

 このホテルのスタッフの勤務は三交代制だ。生活が不規則なせいで、誰かと知り合う機会もなかったと桜子は笑っていた。

『慎一郎さんと出会わなかったら、一生誰とも付き合わなかったかもしれません』