ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 年寄りはこらえ性がないからと笑っていられたが、そんな謙虚さを含めて本当に素敵なお客様である。

 接客業なのでときには今回のような嫌なめにも遭うが、それを上回る素敵な出会いや経験がある。

 だから私はこの仕事が好き。

「やつらもこれに懲りておとなしくなるといいけど」

「うーん。どうかな」

 彼女たち最後まで私には憎悪に満ちた視線を向けていた。

 よほど私が気に入らないのだろう。

「入院していたときは、皆さん普通に接してくれていたんだけどね」

 嫌われる原因があるとすれば、心当たりはひとつだけ。

 慎一郎さんに忘れ物を病院に届けに行ったとき、婚約者だと紹介してくれた。

 思えばあのとき視線が痛かった。

 偽りの婚約者なのになぜ紹介したのかと聞くと、彼は『色目を使ってくる看護師と女性医師への牽制だから』と言っていた。

 彼女たちは私を婚約者として認識しつつ、許せないんだろう。