ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 意気消沈する私に、同僚の美江ちゃんが肘をツンツンとあてる。

「よかったじゃーん桜子。もー、うらやましい」

「よくないよ」

 ここはフロントなので雑談は基本的に禁止。ほとんど口を動かさず、腹話術のように話をする。

「ええ? どうしてよ。スイートルームの王子様とさらにお近づきになるチャンスじゃない」

「言ったでしょ。興味ないって」

 私だって朝井様はイケメンだと思うし、綺麗だなとうっとり見惚れたりもする。でもそれと男性としてどう見るかは別だ。

「もう、桜子ったら本当にイケメンが嫌いなのね」

 心で大きくうなずいた。

 その通り。私はイケメンが苦手。少なくとも恋愛対象としては考えられない。

 理由ははっきりしている。

 私の父は結構なイケメンだった。優しそうな風貌の美形陶芸家として、父は女性客に絶大な人気があった。

 営業手段の一環として結婚を隠していたらしい。それは母も承知の上だったようだが、浮気まで許してはいなかった。