そして予定通り、仕事が終わったその足で実家に向かった。
家に帰るのはひと月ぶりになるか。
前回帰ったときは性懲りも無く俺と桜子では合わない、考え直せと言ってきた。
一緒に暮らし始めて気が変わっていないかと、俺の様子を見たかったんだろう。人づきあいに神経質なところがある俺が、桜子との暮らしに音をあげているとでも思ったのかもしれない。
予想に反して幸せそうな俺を見てため息をついていた。
家政婦に聞いたが、俺の様子如何では縁談を勧めるつもりだったというからあきれたものだ。まったく懲りていない。
「おかえりなさいませ、慎一郎さま」
「ただいま」
玄関を入ると、女性物の真新しい靴があった。
出迎えに出てきた家政婦に聞くと「珍しいお客様がお見えです」と言う。
「俺が知っている人か?」
「ええ。ほんの五分前にお見えになったばかりで」
名前を言えばいいものを家政婦は「驚きますよ」とくすりと笑った。
楽しそうな笑い声が廊下まで響いてくる。



