ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

『バレンタイン時期っていうのはホテルは忙しいんだな』

 そう聞くと、ため息混じりに彼女は答えた。

『繁忙期ってほどではないんですけれど、初めて利用する若いお客様もいらっしゃるので、いい思い出になってほしいですからね』

 客はいずれにしろ、自分の思い出はどうなんだよと、俺は勝手なことを考えた。

 突き放したくせに。

『病院は変わらないですよね? バレンタインだからって』

『さあ、俺はここ一年しか知らないが特に聞かないな。クリスマスは小児病棟を少し飾りつけたりしているみたいだが』

 おでんを食べたあの夜も普通に返事を返していれば、この前のような他愛もない会話が進んだんだろう。

 俺は本当にバカだった。

 わかっていたからこそ、婚約者になってもらったのに。

 彼女は届くか届かない微妙な位置にいて、さりげなく気遣ってくれる。

 俺をどう思っているんだろう。