ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 帰る道々、私は裏切られたような気持ちでいっぱいだった。

 先輩の結婚披露宴で、私は先輩の花嫁がつわりで苦しそうにしていた姿も見ている。彼女が妊娠を偽っていたとは思えない。

 別れをチラつかせて、挙句の果てに『一回だけでいいよ』だなんて。私も随分安くみられたものだわ。

 突き飛ばさなければ、頬に唇をつけられてしまったかもしれない。

 蘇る嫌悪感に身震いした。

 腕を掴まれてアルコールの混じった息を感じたときの、憎悪にも似た感情。男性すべてが嫌いになってしまうそうだ。

 

 レジデンスに帰ると慎一郎さんがいた。

 すでに夜の十一時だ。食事も終わっているのだろうバスローブを着たままリビングでくつろいでいた。

 明るい照明はつけず、暖色のダウンライトだけがついている。

 手にしているのはワイングラスだ。

「おかえり」

 彼の柔らかい微笑みになでられて、心のささくれがとげをなくすようだった。

「ただいま」

 そのまま部屋にいき、荷物を置いてお風呂に入る。