ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「いや、ここ数日すれ違いで顔も合わせていない」

 わざとというわけではないが、宿直があったり疲れて寝てしまったり、あの夜以来本当に顔を見ていない。

 冷蔵庫には欠かさず作り置きがあるから、帰ってきているのは知っていたが。

「あの様子じゃそうだろうな。チョコレートくらいはもらったんだろ?」

「いや」

「ええ? 随分さっぱりしてんだな」

 だとすると、彼女はなんで俺のバレンタインの予定なんて聞いたんだろう。

 もしかして特に意味はなかったのか。

「あ、朝井先生」

 外来にいる事務の女性に、不意に声をかけられた。

「ちょうどよかった。夕月様という女性がこちらをお届け物に来ましたよ」

「え?」

 紙袋を開けると、俺のスマートホンが入っていた。

 他にメモが一枚。

【ないと困るかと思いお届けしておきます 夕月】

 慌てて事務の女性に聞いた。

「彼女は?」

「帰りましたよ。まだその辺にいるとは思いますけど」