ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

「いや、別に。ちょっと疲れただけだ」

 昨日は早々に寝た。なので本当は疲れていない。

「そういや昨日、お前の婚約者を見かけたぞ。夕月さんだよな、ネームプレートを見たんだ。そうある名前じゃないし」

「コルヌイエに行ったのか?」

 八代はうなずく。

「バレンタインディナー。この前の合コンで知り合ったCAと。あれから付き合い初めてさ」

「オペの後に行くとは、お前も相変わらずまめだな」

 この男が付き合う女を切らさない理由はそういうところにあるんだろう。

「それで?」

「ん?」

「彼女を見たんだろう?」

「ああ。忙しそうだったぞ。フロントでもバラを配ったりしていたし、全館バレンタイン一色で、ホテルの仕事も大変だなぁ」

「声をかけたのか?」

「かける隙もなかったよ。俺が見かけたのはフロントだが、電話に出たり接客したり、ずっと動いていた」

 八代の話によると、帰りに見かけたときには高齢者の客に付き添っていたという。

「バレンタインはちゃんと彼女と楽しめたのか?」