ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 無理を言うと、微かだが唇が動き少し戸惑った様子を見せる。それがおもしろくて、ついついからかいたくなる。

 いくらか男として俺に好意を抱いただろうかと思ったが、まったくそんな気持ちはないようで、しきりにインテリアコーディネーターの女とふたりきりにさせようとした。

 そんな彼女だから、一夜限りの婚約者のふりを頼んだ。

 実際彼女は完璧なまでに演じてくれた。

『私は心から彼を愛しています。心臓外科医である彼をとても尊敬していますし、彼の支えになりたいんです』

 本気で愛されいると思ったくらいだ。

 それがまったく不快ではなく、ついつい勢いにのって抱いてしまったが--。

 先走り過ぎたか。

 

 つらつらと思いを巡らせながら事務局で用事を済ませ、ロビーを歩きながら、ついため息が漏れた。

「はぁ」

「どうした? ため息なんてついて珍しいな」

 振り返ると八代がいた。彼も事務局での用事を済ませたんだろう。

「ケンカでもしたか? 婚約者と」