ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 最初は信じられないというふうに戸惑った表情をしていたが、彼女の弟の学費の話になると、眉をひそめた。

『その話は……』

『仕事だと思って引き受けてもらえないだろうか。もちろん寝室は別でいい君の部屋にベッドを置くから』

 条件を提示してもなお迷っていたが、最後のひとことが効いた。

『なにしろもう、うちの親は信じてしまったしね』

 責任感の強い彼女は、自分のせいだと感じたんだろう。

『わかりました』とようやく引き受けてくれた。

 

 コルヌイエのフロントで、彼女と出会った。

 俺がカウンターの前に経ったとき、フロントは彼女はひとりだった。

『いらっしゃいませ』
 にっこりと微笑んだものの、目の前にいる俺よりも、俺の後ろを気にしているように見えた。

 振り返れば高齢の女性がいた。

 その後、なにもなかったように、再び俺に微笑みかけた彼女のネームプレートを見た。

 手続きをしながらなにげに見ていると、俺が振り返っているわずかな間に彼女はベルボーイを呼んだらしい。女性は駆けつけたベルボーイに付き添われロビーのソファーに移動した。

 俺の手続きが終わると、すかさずソファーで待つ女性のもとに駆けつけた彼女は、俺に対するよりも何倍も丁寧に女性を気遣っていた。

 一度見たら忘れられない美しい名字、夕月……。

 コルヌイエに滞在中、彼女はずっと、俺に対してあくまでも客としての姿勢崩さず、どこまでも誠実だった。