ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 たまに現金を渡そうとする患者がいて断るのに苦労するが、バレンタインの小さなチョコレートまで断る理由はない。快く受け取っている。

 医療関係者からは受け取らず断っているが、昨日も医局の新人の女が渡そうとしてきた。俺は婚約したと言ってあるのになにを考えているんだか。

 ふと思い出した。

『慎一郎さん、バレンタインの予定は?』

 かりそめの婚約者、夕月桜子。
 彼女はどういうつもりで俺の予定を聞いたんだろう。

 特に意味がなかったようにも思うし、俺との時間を過ごしたいという気持ちの表れのようにも聞こえた。

 あれはどっちだった?

 これまでもそういう女たちは何人もいた。

 なにも期待しないドライな関係を築けるふうを装っておきながら、いざ関係を持つと必要以上に俺との距離を詰めようとする。

 最初から結婚を匂わせる女よりも、ある意味タチが悪い。

 彼女なら違うと思ったんだが……。

 意外にも、桜子は処女だった。

 美人で人あたりもいいからモテるだろうし、二十七歳にもなればてっきり経験はあるかと思っていたが、そうではなかった。

 初めての男なら執着もわかるが――。

 執着されている気配もなかったと思う。