ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 最上階にあるバーのバーテンダーなので同じように忙しい。甘い夜をふたりで過ごしたりはできないのだ。

「桜子は? 彼といつバレンタインイベントするの?」

 美江ちゃんはニヤリと目を細める。

「彼はイベントを楽しむようなタイプじゃないもの。特に考えてもいないわよ」

「そうなの? まぁ確かに朝井様はクールだもんね」

「うん」

「でもさあ、チョコレートくらいはあげたでしょ?」

 あげていない。

「やだ、まさか渡さないの?」

「忙しくて買いそびれちゃって」

 正直言うと、おでんの夜のあの冷ややかな態度がなんとなく気になって、義理でもあげる気にはなれないのである。

 優斗は北海道へ旅立ち、私はほとんどの荷物を運び入れ、今はレジデンスに住んでいる。

 おでんを食べた夜から五日が経ったけれど、ずっとすれ違ったままろくに顔を合わせてもいない。

「あげなさいよ。今からでも。待っているかもしれないじゃない」

「でもほら、今から買うっていうのもねぇ。バレンタインは昨日で終わったし」