ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました

 気のせいかその後も口数が減った彼は、私がまだ食べているのに「ごちそうさま」と席を立った。

 おでん。喜んでくれたはずじゃなかったの?

 それとも疲れているとか。

 もしかして私、何かやらかしました?



 悩む間も無く、次の日からは予想通り慌ただしい時間が過ぎていった。

「あー、疲れた」

 今日でバレンタインイベントが終わる。

 夜十時半過ぎ。スタッフルームに入ってきた美江ちゃんは、どっかりと腰を下ろし大きく伸びをする。

「今年も盛況だったね」

 ちょうどコーヒーを落としたところなので、美江ちゃんの分もカップに注ぐ。

「はいどうぞ」

「サンキュー」

 テーブルの上はチョコレートだらけ。どこからともなく集まってくる差し入れでいっぱいだ。

「ホテルのスタッフとしては喜ばしいんだけど、個人的には切ないよ」

 美江ちゃんはため息をつく。

「私の場合は、ふたりとも仕事だからあきらめはつくけどさ」

 彼女の恋人もこのホテルで働いている。