考えてみれば、普通の恋愛だとしても一年で別れるのは珍しい話じゃない。私たちの場合は先に未来が見えているというだけで、普通の恋愛となにも変わらないのだ。

「朝井様と一緒に暮らすことになって……」

「えーー」

 美江ちゃんは目を丸くする。

「やったじゃん桜子! 玉の輿。やっぱりねー。朝井様、桜子にだけ心を開いていたもの」

 彼は絶対に桜子に気があると、美江ちゃんは常々言っていた。

 実際は違う。キューピットの矢ではなく、白羽の矢が当たったという感じだが。

「この先はどうなるかわからないから、みんなには内緒だよ」

 もちろん契約というのは秘密。

 一年後には別れた報告をしなくちゃいけないし、そのためにも危うい関係だとアピールしておかなきゃね。 

「ん? なにか心配ごとでもあるの?」

「彼のご両親はよく思っていないようだから、あんまり自信はないの」

 実際大反対だ。偽の婚約者だからいいようなものの、本当の恋人ならかなり傷ついたと思う。