「咲、いくわよ」





いつまでも玄関にぼうっと
突っ立ている私に
しびれをきらせた母が言った。




はぁい、と返事をして車に乗り込む。





「ほら、もう…
 しゃきんとしなさい。
 あんたは緊張感が
 足りないんだから…」





ぐちぐちと私に小言をいう声を
ぼんやりと窓の外を見ながら聞いていた。