「じゃあ、とりあえずメモしておこうか」

 そう言って近宮先輩はコートのポケットから取り出した手帳に何かを書き綴る。

「消去のリストだ」

 口調は、あくまで平然としている。

「あのお父さんが残っていては、『完璧な自殺』はできないからな。

 お父さんの記憶に君が残っている限り、君の存在はこの世界から消えない。

 こんなにも絶望している君なのに、お父さんの記憶の中の君は笑っているかもしれない。

 それでは、まったく癪な話だろう?」

 ◇◇◇

 この時から、私は何となく近宮先輩が私を連れ回す意図を解しはじめていた。