「ほら、着いたよ」

 やがて辿り着いた懐かしい風景を前に、私はしばしその場に佇む。

 生まれてから、小学生までの間を過ごした、酒蔵の家だ。

 お酒の香りを思い出す。

 思えば、無条件な安心の中に包まれている感覚と、お酒の香りは私の中でリンクしている。

「あれが、君のお父さんか」

 やがて、併設されている酒店の外に、荷を運ぶために出てきた人影に、私は胸が締め付けられる。