「しかしその反応。

 お父さんには嫌な思い出でもあるのかね?」

「お父さんは悪くない」

 悪いのは、お母さんが連れてきたアイツだ。

「君が死にたい理由もその辺りにあるのか。

 まあ、ありふれた話だね」

「先輩に何が分かるんですか?」

 コートのポケットに手を入れて、うっすらと降る雪を気にするそぶりもなく私の隣を歩いていた先輩に私は詰めよる。

「大人は、汚い」

 そう言い捨てて、私はギリリと軋むほど歯を噛み締めたが、近宮先輩の反応は簡素なものだった。

「悪いが、動機に興味はないんだ」