その差しのばされた手を、私は手にとった。

 完璧な自殺に、死ぬ私へのたむけに、シャトー・ディケムの1995年。

 条件は悪くないと、私は思ったのだ。

 ◇◇◇

 もっとも、この時点ではこの近宮先輩が、どうしようもないサディストだということに、私はまだ気が付いていなかったのだけれど。