「いるよ」


藤崎さんはそう言った。


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連れて行かれた先は、高級そうな中華のお店の個室だった。


分不相応なところに来てしまった気がしたけれど、案内係に案内されるがままに堂々と進む藤崎さんに付いて行った。広めの豪華な内装の個室にまた驚き、落ち着かない。



「こんなところ、…よく来られるんですか?」

「一人では来ないよ」


藤崎さんは静かにそう言うと、メニューを見ても何を頼んでいいか分からない私を見て、『同じコースで』とウェイターに頼んでくれた。



「私と二人で良かったんですか?」


『一人では』という言葉が気になる。


藤崎さんのことを何も知らない、知りたい。


「二人ではいけなかった?」


その強い瞳を目の前にすると、対等に話せる自信が無くなりそうになる。