藤崎に振り回される面々、それはきっと彼に近しい仕事をしている人員かもしれない──。


そう考えると、先日慣れた様子で部長室に入って行った恭佑のことが頭に浮かんだ。


「それは企画事業部の方たちのことですか?この前、今井さんがお部屋に入って行かれるのを見かけましたけど、部長室には色々な人が来られるんですよね」


それとなく恭佑の話を出した。藍香には藤崎の仕事のことが全く分からない。変な質問にならないよう、無難に言葉を選んだ。


「事業部だけじゃない。でも今井はよく来る。非常に優秀な人材だよ。俺が無理に任せてる仕事もある。彼と知り合い?」


「はい、少しだけ…」

自分で話を振っておきながら返答に困ってしまった。藤崎の口から、恭佑がどんな人物か聞きたい好奇心から出した話題だった。


「そう。今井は特に目をかけてるうちの一人でね。任せたことは必ずと言っていいほどやり遂げてくるよ」


「……じゃあ、もし、私が今日報告したような状況に今井さんがいたら。彼ならどうしたでしょうか?」



「どうだろうね。一人で課長に話をして聞き入れてもらえないなら、周りを巻き込んで、多数の意見として課長も無視できない状況を作り上げるんじゃないか?彼ならそうやってでもやり遂げるんだよ」


「……なるほど……」


恭佑の仕事のことも何も知らなかった。恭佑と藤崎の関係性も。


『何としてでもやり遂げる』……そう形容された恭佑。


初めて会った時の柔らかくも見えた彼の印象と、昨日半ば強引に藍香を抱いた側面。



──恭佑の本質は後者なのかもしれない……



藤崎の表現は確かに恭佑の内面を表していた。